林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第10回
やる気を引き出すのに効果的な住宅リフォーム
 入院したのを機に、退院してからも、甘えて自分では何にもしなくなるケースをよく耳にします。
ご家族としては、入院前のように、身の回りのことをやって欲しいのだけれど、「そんなことは無理」とか、「出来ない」とか言って、自分で体を動かそうとしない。ご家族は、それではますます体力が落ちて、寝たきりになりそうに思える。もっと運動をするように勧めると、口ゲンカになる。
一方、お年よりの方からは、「また骨折しはしはしないか心配で」、「ちょっとでも痛みがあると不安で…」というご意見もあるようです。
高齢の方が、病院に1週間入院すれば、そうとう心肺能力も落ち、ちょっと体を動かしても息切れして、以前はラクに出来ていた運動も辛くて出来なくなることがあるようです。それに、誰だって一度ラクをすると、ラクなコースを進みたいのが人情ですよね。特に、そばに娘さんなど、世話をやいてくれるひとがいればなおさらです。
この悪循環が始まると、どこかでエイッと、一気に方向転換しないと、家族間にフラストレーションがたまってきます。そんな時、効果的なのが住宅リフォームです。
 住宅のリフォームを始める前には、どんなリフォームをするか、当人を中心に話あいます。その話し合いを通して、介護する人、される人、双方が自分の気持ちを吐き出し、相手の考えも理解して、協力しあう関係にもっていくことが出来るからです。
優しくされたい。世話は焼いてもらいたい。だけど、シモの世話までは受けたくない。
最期まで自力でトイレに行きたい、ほとんどのお年よりは思っておられます。それならば、体力をつけるしかない。そのことをまず当人に理解してもらうことから話は始まります。
さらに、今の介護状態を続けることが出来ないことも、説明して理解してもらいます。この時、介護する人の心情的な負担感も無視しないでください。むしろ、そうした心情的なことのほうが重要なのです。
負担感というのは、例えば、「自分で出来ないことなら少々負担になってもなんとかしてあげようと思うけれど、出来ることを甘えて頼られるのはイヤ」といった、そんなことも、長期の介護になると予想以上に重要なのです。
そして、介護するご家族全員が、「自分のことは自分でするものだ」という意思統一をします。全員が、この方針に添った態度をとらないと、誰か一人が「可愛そうに、そんなことまでさせなくっても…」などといった態度や言葉を発すると、自立計画はうまくいきません。
そして、実際に、失った機能を補助するリフォームを取り入れることによって、どこまでなら自力で出来るかを、話し合います。欲を出さず、具体的に。出来ないからといって責めない。これが基本です。
例えば、夜のトイレを自分で行けるようになれば、介護者は安心して眠ることが出来るようになる、など。ほんの少し、しかし具体的な自立計画を立てて、その実現のためにはどんな補助があれば出来るかを検討します。トイレの場合、ポータブルトイレを使うことが多いようですが、水洗トイレのほうが、介護する方にとってもよほどラクですし、介護される方にとっても好もしいものです。足元が不安定でも自力歩行が出来るようであれば、手すりをつけたり、人を感知して点灯するオートライトを足元につけたりして、水洗トイレを利用出来ないか検討します。
「こうしてもらえたらラクなんだけど」と、協力をうながす形で話を進めていくとよいのではないでしょうか。
トイレまでの距離が長く、一気に歩くことが無理であれば、途中に一休み出来るベンチを設けるのがいいのか、トイレと寝室を近づけて、ベンチをいざりながらであれば行けるのかなど、当人の体の状態と意欲などを聞きながら、いろいろなアイデアを出し、設計担当者も一緒になって実現を検討します。
この時、アイデアを出したり、ご家族間の意見を引き出したり、資金を解決したり、住宅リフォームが実りあるものになるよう尽力するのが住環境コーディネーターです。
介護リフォームは、一度に大掛かりなリフォームをするより、意欲を引き出しながら、その時々の体に合わせて小刻みにするのが、うまくいく秘訣のようです。

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