林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第14回
トイレ介助をスムーズにするには、まず時間を計ることから
 起床、朝の身じまい、排泄、食事。すべてを親の手に委ねていた赤ちゃんの時から、1つ、1つ自分でできるようになって既に数十年。多くの方が、何も意識せず、暮らしてこられたと思います。それが自力でできなくなったのです。
大人になって、日常生活を、人手を借りなければできないというのは、当人にとっても大きなストレスだということを、きちんと認識することが、在宅で介護をする場合、特に大切です。

例えばトイレの場合を考えてみましょう。
身体内部で排泄感を感じて、それから介添えを頼みます。当人の体の中には、それまで自力で動いていたときの時間感覚が残っているので、もっと早く来てくれたらいいのにと、介添え者の対応が遅く、もどかしく感じられます。
介添えをする方も、自分の日常生活があるのに、精一杯やっているのに、という思いがあります。そんな時、トイレが間に合わなかったりすると、双方に不満が残ります。
こうしたアクシデントが重なると、不幸な堂々めぐりが始まってしまうのです。
在宅介護のコツは、こうした不幸なアクシデントを、堂々めぐりの状態に持ち込まない理性的な対応が必要です。

もっとも重要なトイレに関して。
第一は、本人が自力で行ける環境を整備することです。自力で行ける近さに水洗トイレを持ってくることができれば理想的です。つたい歩きができるようであれば、手すりをつける方法があります。イザって行けるようであれば、ベッドからトイレまでベンチを設ける方法もあります。ところが、これだけの環境を整えても失敗することがあります。
というのは、体が、健康な時と同じような速さでは動いてくれないからです。
そこで実際にトイレに要した時間を、介添えをする方は、一度、時計で計ってみてください。
例えば、トイレの合図を聞いて、実際に排泄が始まるまで5分でかかったとします。その時間内に、本人がトイレまで行ける方法はどの方法なのか。伝い歩きで行けるのか、イザって行って間に合うのか、ベッド傍にポータブルトイレを置く方法がいいのか、考えます。
もし今、伝い歩きでトイレに行っている場合、時間ギリギリだとしたら、足元は無理をしていないか、注意して見てあげてください。無理をしていれば、つまずいて転んだり、下ばきを汚す原因になることがあります。

介添えが必要な場合、一日のうちトイレに行った時間も記録してください。
24時間のスケジュール表を作って、何時にトイレに行ったか記録します。食事が安定していれば、トイレの時間も、毎日それほど大きく変化するものではありません。朝の6時、10時、1時……と大体4時間間隔ぐらいでトイレに行く方が多いのではないでしょうか。
一日、どの時間帯にトイレに行くかが分かれば、その時間の前は、当人の傍で過ごす作業をするのです。トイレ待ちの時間のうち1、2回は、一緒に音楽や朗読を聞くなど、リラックスタイムに当てることができると、とてもいいのですけど。
身近に居れば、トイレの合図を聞いて、すぐに対応してあげることができます。
またトイレの時間を外して、家事やお買物や休息をするなど、介護をする方のスケジュールも立てられます。
トイレスケジュールを立てて、なによりいいのは、介護をする方が、不意に、呼びつけられたという感じを持たなくて済むことです。
「そろそろトイレはいかが」と声をかけるのと、「早く来て」と呼ばれるのとでは、介護をする気分が大いに違ってきます。
また家族が外出する時など、ヘルパーさんを頼む場合も、トイレ介助の時間が分かっているとオムツを使わずに済みます。

トップに戻る