林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第16回
外に出て、煮詰まった介護に風をいれよう
5月、新緑が美しいですね。桜の頃ほど寒暖の差も大きくなく、体が弱い人も外に出やすい季節です。
毎日の介護で、お互いに決まりきった受け答えしかできなくなった関係も、外に出てリフレッシュすれば、感謝の気持ちや、優しさを取り戻すことができます。そんな風に外出を利用してはいかがでしょう。
家ではベッドで横になりがちなお年よりにとって、いつもより体を起こしている時間が長いというだけでも、外出は相当な運動になります。生活リズムが昼夜逆転している場合、外出することで元に戻ることがあります。
ドライブは気軽に出かけられ、移り変わる風景を楽しめて、いいリフレッシュになります。
その時、大き目のクッションと軽い小型の毛布を持っていくと重宝します。疲れたら、助手席をリクライニングさせ、大きなクッションの上に足を乗せて、毛布をかけて休ませます。
毎日の生活の中でも、レジャーと意識すれば、短い外出でリフレッシュできます。
例えば、お買物で、一緒にスーパーに出かけるだけでも外出の楽しさを味わうことができます(スーパーは冷房がきついので、肩から羽織る大きなショールを持っていくことを忘れないように)。スーパーへの外出は、食べたいものを聞いたり、昔はこんな料理をしていたね、など古い話が出てきたり、いつもと違う話題が出てくるのがいいですね。
車イスでちょっと遠回りして、公園で一休みするだけでも、いろいろ言葉を交わせば十分楽しめます。

もし外出を誘っても、出かけるのをためらう場合は、トイレを心配されていることがよくあります。トイレの失敗を恐れる気持ちは強く、その対策が立たないから外出したくないということもあるようです。
外出時、最近は「道の駅」などのドライブインには、車イスで利用できるトイレが用意されています。時間を見計らいながら立ち寄るといいでしょう。
トイレに行って間もないのに、何度もトイレに行きたがるのは、当人が失敗を恐れていることを理解してあげてください。心理的なトイレの要求の場合は、面倒くさがらず、車の中では簡易トイレ(尿を受けるとゼリー状に固まる)を利用してみてはどうでしょう。また尿漏れを受け止めるパンツなども利用すると、外出を気軽に楽しめるのではないでしょうか。こうした道具を使う時は、大きなショールで覆いをしてあげるなど、当人が気まずい思いをしないように気を配ってあげてください。外出時、トイレが心配で飲み物を我慢することがあります。いつもより水分がへると便秘の原因になったりします。トイレ対策は万全だから大丈夫と安心させて、いつもと同じように飲ませてあげてください。
外出を楽しくするには、一回の外出時間は短めにするのがコツです。

トイレに気を配ってあげていると、次第に優しい気持ちになります。介護に携わる方は、自分自身の中に目覚めた優しい気持ちを意識してください。介護が煮詰まった時の、イライラした気分に比べて、優しくしてあげている自分自身はとってもステキだとおもいませんか。自分自身の優しさで、自分自身を幸せな気分にするのです。
よく、こんな相談を受けます。
「何をしてあげても『ありがとう』と言ってくれないから、イヤになっちゃう」と。
その気持ちはわかります。けど介護をする場合、言葉にとらわれていると、一層、介護状況を悲惨にしてしまうことがあります。
介護を受けるということは、当人にとって、とっても心苦しいことなんです。こんなお世話にならず、若いときのように自分の力でなんでもしたい。でも体が思うように動いてくれない。介護している人の負担を軽くしてあげたいけど、どうすることもできない。だから、ありがとう、なんて言えないのです。とても辛い心なのです。
介護をしている側からすれば、一言「ありがとう」と言ってくれたら、報われるのにと、いう思いがあります。
介護する人の心と、介護を受ける人の心がすれ違っているのです。
そんな時は、強いほうが、弱いほうを、思い遣るしかありません。
さらに介護をしてあげるひとは、人に優しくすることで、優しい自分をイメージすることができます。弱い人を守ってあげることで、強い自分をイメージすることができます。
小さな時、親はきっとこんな風に守ってくれたんだろうな。だから私はいま親を守ろうとしているのだろう、と思うこともできます。
私の場合、親を守るようになって、はじめて自分が大人になれたように感じました。
介護をするコツは、介護するひとが、いかに上手に自分の気持ちを幸せな状況に持っていくかです。空想力を上手に使って。
まず窓を開けて、5月の風を室内に取り入れましょう。そして、ツツジ、フジ、バラと花便りを届けて、外へ誘い出しましょう。外に出ることで、煮詰まった介護に風を通しましょう。

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