林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第19回
80歳を超えても、脳は若返る
 平成17年1月、シニアを対象とするパソコン教室を共同で開きました。そのおかげで年齢幅も、関心も、体調もさまざまなお年寄りの方と親しくお付き合いさせていただく機会がふえました。

動機は、お年寄りにこの便利な道具を使いこなせるようになってほしいと思ったからです。

パソコンを使って、思い出の写真や、趣味の作品を整理して、孫や親しいひとたちに遺してあげて欲しい。自分には不要になった道具や家財を、欲しいひとに譲ってあげて欲しい。家族の歴史を書き残しておいてあげて欲しい。
このようにお年を召した方にパソコンを使いこなせるようになっていただくには、仕事の場で使う人に教えるような教え方ではなかなか身につかない。ホームユーザーを、パソコン使いにするためには、新しい教え方が必要だと気づいたからです。

以上のような動機でパソコン教室を始めました。
すると、「町内会の年次報告を前の担当者がパソコンで作っていたので、私も」といって駆け込んでこられる方、「町内会の役が当たったので」という理由でパソコンを始められる方が結構いらっしゃいます。
「子どもがパソコンを置いていったからさわってみようと思って」など好奇心旺盛な方も少なくありません。
「デジカメ(デジタルカメラ)を買ったので使い方を教えて」と来られる方、電子メールを使えるようになりたい、という希望もあります。
生徒さんの最高年齢は81歳です。

最近は「インターネットで株の取引ができるそうだから教えて」とこられる方があります。といってもインターネットだけでは株はできないので、文字入力ができるように練習していただきます。お年を召した方に今からローマ字入力を身につけていただのは気がひけるのですが、毎週つづけて来られていると、いつのまにか相当な速さで文章を書いていらっしゃるので驚きます。
はじめはこわごわ電源を入れていた方が、次第に新しい道具を使えるようになると楽しそうにパソコンを開かれます。
ホームユーザーがパソコンを使いこなせるようになるためには、毎日パソコンを使う方法を提案しなければなりません。それぞれの関心や家庭環境に合わせていろいろな使い方を提案させていただきます。
たとえば、毎日血圧を測ってお医者様へ提出されている方がありました。その方には、血圧のデータをエクセルのグラフにして提出することをお勧めしました。毎日パソコンを使うことで習熟し、今では血圧のグラフのほかにも、趣味のグループのお友達のスケジュール入りカレンダーを毎月作成してあげては喜ばれていらっしゃいます。

パソコンを学びに来られるお年寄りは健康な方だけではありません。
脳梗塞の後遺症で記憶障害の方、パーキンソン病の方などもいらっしゃいます。教室にお越しになれない方のために訪問学習も行っています。
脳を使わないことで廃用症候群になってはいけないという配慮から、ご家族が申し込みに来られる場合もあります。

キーボードでの入力が難しい方には、音声入力をしていただくこともあります。がうまくいかないこともあります。どうしたら成果を生徒さんにお返しできるかちょっと思い悩んでいたとき、脳卒中などを専門にされている米山公啓(よねやまきみひろ)医学博士の講演の記録を読む機会がありました。

脳は何歳になっても若返らせる方法があるというお話です。
脳の神経細胞は一度壊れると蘇らないと思われていましたが、最近の研究で、「脳細胞の一部で再生しているかもしれない」という研究が発表されたそうです。「神経細胞が増えることと神経細胞のネットワークが増えることを『脳が活性化される状態』」というのだそうです。年齢とともに機能が低下する脳も、活性化させることにより衰えることなく、むしろ若返らせることができるということが明らかになってきたそうです。その方法として米山先生は、「目的を持つ」、「脳に必要とする栄養をとる」などとあわせて、「知的好奇心を持ち続けること」をあげられています。具体的な方法として「パソコンを習得する」のも効果的で、新しいことを学ぶ刺激が脳内を活性化するそうです。さらに「人に評価されることが非常に重要」とおっしゃっています。単に学ぶだけでなく人の評価を受けるといった創造的な脳の使い方をすると、どんどん脳は若返るというお話に、私は感じ入ってしまいました。「ブログ(パソコン上の日記)は簡単に、今日からでもすぐに作ってインターネットで公開できますのでぜひやってみてください。足腰が弱くなってもパソコンを使えば銀行振り込みもできますし、本も買えます。つまり外との接点をたもつことができるのです。」(積水ハウス 納得工房 すまい塾誌上公開講座第138回より引用)

米山先生のお話を読んで勇気百倍。9月から、「林けい子のいきいき暮らし術講座として」還暦史(自分史)講座「デジタル福寿草」と、絵画や書、写真などご自身の作品をパソコンで絵ハガキに仕立てて大勢の方に見ていただく「デジタル結び草」、不要になった家財をネットオークションにだす「ウエブゆずり葉」の3講座をスタートさせます。ほかホームページ講座などと連携して、80歳を超しても、いくつになっても楽しく脳を若返らせていただこうといまから楽しみにしています

“新しく何かができた”ということがあると、介護にも張りがでます。もしお手持ちのパソコンがあればまずインターネットを見せてあげることから始めてください。未知の世界に接するだけで、目が外に向きますから。試された方のご報告をお待ちしています。


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