林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第5回
在宅介護は、孤立せず、時間に区切りを設けて
 介護保険が始まりましたが、まだ完全に社会的サービスだけで介護と生活を維持ができる状態にはなっていません。在宅介護の場合、誰か、介護に携わる人が必要になります。今でも、同居している長男の妻が介護を受け持つことを当たり前のようにみなす風潮が残っているようです。が近年は、長男の妻だけに押し付けるのはよくないという、ごく当たり前の意見が聞かれるようになりました。本当にそうだとおもいます。介護は重労働であり、一人の女性で担えるものではありません。子供さんたちが複数いれば、その人たち全員が当事者となってチームを組んで行う。その配偶者も協力する。長男の妻も協力者でいいのです。男性もきちんと役割を果たしてもらう。核家族の現在、男性に介護はできないなどといっている余裕はありません。が各ご家庭の事情もあり、一概に言えないところが、在宅介護の難しいところ。在宅介護のいくつかの注意点をあげましょう。
第1は、介護に時間の区切りを設ける。
介護は先の見えない仕事です。いつ終わるのか分からない作業は人を非常に消耗させます。週単位で、月単位でと、区切り方は、その家族の事情によっていろいろあると思います。介護に携わる人が複数いれば、1週間交代にする。あるいは1ヵ月交代の場合もあるでしょう。人手に余裕があれば、複数で担当するほうがいい。常時、複数が無理であれば複数になる時間を設定する。そうすれば会話もでき、一人で煮詰まるのを防ぐことができます。最近は子供さんが少なく、一人で親の介護をされている方があります。その場合、エンドレスで毎日、毎日、介護に明け暮れることになりやすい。これはストレスが溜まり、キケンです。介護保険を活用して、一週間の介護スケジュールの中で、完全に介護から開放される時間を設ける。充分安眠できる時間を確保し、自由気ままに過ごす時間をもつことが必要です。親の介護が発生していると、身内が遊びに出かけるのを自粛してしまいがちです。しかし介護が1ヵ月以上経過したら、介護にリフレッシュを織り込まないと不満がたまります。介護に携わる人の休養のために、ショートステイを利用するのは有効です。介護老人保健施設などで、介護者の休養のためという理由で、お年寄りを預かるショートステイも可能です。その時、介護を受けるお年よりに、介護する人に休養が必要なことと、期間をきちんと説明をすることが大事です。黙って車に乗せて連れて行くなどは論外です。家が移ることはお年よりにとって非常に不安なことなのですから。
第2は、介護に携わる人の権利も守る。
ショートステイの理由に介護者の休養が認められたのは進歩です。昔の大家族で暮らしていた頃、女性は、自分の身体を休めるのにも家族に気兼ねして暮らしていました。少なくとも、いつどれだけ体を休めるか、本人が決めるべきことです。が複数で介護チームを組むと、昔の大家族時代の道徳が頭をもたげてきて、女性同士、身を粉にして頑張りあいます。自分が納得してやる分にはなんとも言えませんが、「私はこれだけ頑張っているから、あなたも頑張りなさい」という強制が発生しやすい。すくなくとも、本人がしたくないことは強制しない。プロのヘルパーさんを活用すべきです。また介護に携わる人には、第一に責任を果たすべき家族もあり、介護が終わった後の人生にも責任があります。親のためとはいえ、全てを介護に投入できないこともあります。そうした判断の主は本人であること。誰からも強制されないこと。介護する人の権利が守られて、介護される人の人権も守られるのです。虐待が起こるのは、介護する人の権利が踏みにじられた、そのしわ寄せであることが多いのです。
介護が終わったとき、介護に携わった人の心に傷が残ったり、お互いの信頼関係が壊れていたというのでは、あまりに哀しいではありませんか。サッカーに司令塔のような役割を果たす人が必要なように、介護チームにも昔の家刀自(いえとじ)のような人格者を鍛錬した司令塔が必要だと思います。それは、色々な人の不満を吸収し、他の介護者にはもらさない。自分は褒められることを求めず、介護に携わる人の苦労を常にねぎらうことができる人です。
介護に直面したとき、積極的にこうした役割を自分に課して、自分を鍛えてみるというように発想を変えてみれば、介護を得がたい鍛錬のチャンスとすることも可能です。常に他の介護者をねぎらうだけでも本当に胆力がいることですから。

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