林けいこの老いの住まい
在宅介護を視点においたアドバイスや情報をお届けしています。
第27回
食事の大切さ
いろいろな野菜のポタージュを中心にバランスのよい食事を毎日3回食べることで次第に体力が回復してきました。
栄養失調のため混濁していた記憶が整合し始めたのか、話すこともつじつまの合うようになってきました。

用意した食事が全部食べられるようになると、体力も少しずつ戻ってきました。
夫の休日は一緒に散歩に出かけたり、リビングのバイオバイクでトレーニングしたり、運動をするようになりました。

休日、家族が居るといつも昔話を繰りかえします。
そして必ず「早く仕事に戻らなければ」と言ってくれるのです。
病気を直す気がうまれているのか。
明るい希望が見えてきたような気がしました。

夕食を済ませ、入浴後の缶ビール1本が唯一のアルコールです。
1本の缶ビールをおいしそうに飲み干すと、自室に戻っていきます。
量を減らすことでアルコールから遠ざかってくれるのではないかという期待がありました。

自宅に引き取ってからは、家族の休日の違いを利用して誰か一人は家に居て食事の用意をしていました。家族がいない日が週に3日あります。この日は連絡を取り合ってどちらかが早く帰ることにしていました。が双方とも次第に仕事がたまってきていました。

お昼のお膳は自分でできるようになってくれたらどんなにか楽になるだろう。
毎日、朝を食べさせた後、昼、夜を一人でも食べられるようまとめてこしらえて冷蔵庫にいれていくのはかなり骨が折れます。
ある日、材料をキッチンの上に用意しておくので自分で作ってみないか提案しました。

以前は調理を生業にしていたのでそのような提案をしてみたのです。
「ああいいよ。できる」という言葉を心強く聞いて仕事に出かけました。
帰宅してみるとキッチンには用意した材料がそのまま残されています。

聞くと、近くのスーパーへ行ったからお弁当を買ってきたのでそれを食べたというのです。
冷蔵庫の中が一杯になっています。
世話になっているから買ってきたというのです。経済的な負担をすこしでもかけまいとする配慮を嬉しく思いました。

ありがたい申し出ではありますが、これから入院費用もかかることだから、そんな気遣いは要らないと念を押すと、分かってくれたようでした。

お弁当を買いに行くのでは何にもならないと思い、また食事の用意をして出かけるようになりました。
体力的には限界に近づいているのを感じていました。

とある日、用意しておいた食事がそのまま残されています。
その後も食事が残されている日がときどきあります。
口に合わなかったのかと聞くと、散歩に行って食べてきたというのです。
食事が残されている日は決まったように、いろいろな食料が買い込まれています。

体力ぎりぎりのところで作っているだけに、食事が残された日はなんとなく不快です。
苦労して作っているのに、という気持ちが頭をもたげてきます。
早く診察を受けてほしい!
少しイラついた気分が言葉の端々に出てきます。

このまま一生面倒を見続けていくのか。
これから何十年こんな状態がつづくのだろう。
経済的にも、体力的にも、精神的にもどれほど大変なことかと、将来の不安が次第に実感となってきました。

こうした気持ちが分かるかのように、そんなときに限って「病院で一度診てもらおう」と言ってくるのです。
もう何度も診察当日にキャンセルされているので、またかと思いつつも、治療する気持ちを信じたい思いもあります。
さっそく病院に予約を入れます。

明日は診察の当日という日、帰宅すると義弟がいません。
慌ててあちこち電話をすると、自宅に帰っていました。
家のことが気になって見に帰ったというのです。
が、明日の診察には間に合いません。本当に腹が立ちきました。
が食事の用意から開放されてホッとした気持ちもあります。

といって放っておくわけにはいきません。
夫が迎えに行きましたが、むなしく一人で帰ってきました。
「アルコール依存症ではないから診察には行かない」。
「一人でやって行けるから」というので帰ってきたというのです。

義弟が出て部屋を掃除すると、ビールの空き缶を入れたレジ袋がいくつも出てきました。食事をしない日はビールを飲んで寝ていたのです。これには心底、腹が立ちました。
腹に据えかねてしばらく放っておくことにしました。


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